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広島家庭裁判所呉支部 昭和34年(家イ)32号 審判 1959年6月05日

申立人 山川トミ(仮名)

相手方 山川信夫(仮名)

主文

申立人と相手方を離婚する。

長男君夫の親権者及び監護者を申立人に指定する。

理由

申立人は、申立人と相手方を離婚する。長男君夫の親権者及び監護者を相手方とするとの調停を求め、その請求の原因として申立人と相手方は媒酌するものがあつて、昭和三二年一一月○○日挙式結婚し同三三年三月○○日婚姻の届出をした。ところが相手方は昭和三三年八月二日申立人を遺棄して家出し情婦木原一枝と共に所在を晦ましてしまつた。申立人は手をつくして相手方の所在を捜し求め、漸くこれに面会したけれども相手方は離婚を求めて同居を拒み再び行方を晦ましてしまつた。申立人は止むを得ず衣類、手廻り品等を売却して生活しつつ同年一〇月○日長男君夫を分娩した。申立人は幼児を抱えて途方に暮れ実兄を頼つて糊口を濡らしている間本年一月○○日新聞紙上で相手方が詐欺の容疑で○拘置支所に収容せられたことを知り、同月二六日面会して離婚を求めたところ相手方は自己が出所するまで待つよう懇請したけれども出所すればまたまた行方を晦ます虞れがあるので直ちに離婚の調停がしてほしいと陳述した。

そこで当裁判所は調停期日を二月二四日と定め相手方を呼出したけれども、相手方は既に拘置所を出所してその所在は明かでなく呼出状の送達は不能に帰した。そこで申立人に極力相手方の所在を捜して判明次第申出るよう命じた傍ら当裁判所においても注意中、本年五月二五日頃相手方が広島市○○町に情婦木原一枝と共に居住していることが判明したので調停期日を六月五日午前九時半と定めてこの期日に出頭方の通知を五月二八日発送しこの通知は遅くとも同月二九日には相手方に到達したことが推定されるに拘わらず相手方は無断で出席しない。申立人は調停期日に出頭して申立人が寄寓している実兄も病弱赤貧で申立人等の寄寓に堪え得ない。生後九ヶ月の幼児があるので働きもできず困つている。長男君夫に対する愛情は絶ち難いものがあるので母子寮に入ることができるか、子を托する方法があれば親権者監護者たることも辞するものではない旨を陳述した。当裁判所に係属した相手方の情婦木原一枝に対する親権喪失審判事件、養母よりする同人に対する養子離縁調停事件により当裁判所に顕著な事実と申立人の陳述を綜合し、調停委員会は申立人の陳述の真実性を認めることができるし、相手方の申立人に対する従来の処遇、裁判所調査官の居住確認の上の当裁判所の呼出に対しても無断欠席する等の経過に鑑み相手方は誠意をもつて調停に臨む意思なく、従つて調停成立の見込なきものと認め家事審判法第二四条による審判をするを相当と決定した。

そこで当裁判所はこの決定に基き更に慎重考慮の上家事審判法第二四条による審判をするを相当と認め主文の通り審決する。

(家事審判官 太田英雄)

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